プロジェクト管理/支援を担うPMOの課題とその対処法

プロジェクトを管理、支援する組織であるプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が、その本来の役割を発揮するにはさまざまな課題がある。

そもそも役割が関係者に十分に理解されていない、役割に応じた権限が与えられていない、といったこともあれば、PMO側のビジネス理解が足りずに認識齟齬が起き、重要な判断ができない、といったこともあるだろう。

なお、ネット上にある多くのブログ記事を見渡すと、取り上げられている内容は「IT系プロジェクトに特化したPMO」に偏っていると感じる。しかし実情は、ひと口にプロジェクトと言っても規制対応、新規ビジネスの立ち上げ、グローバル展開、新商品のローンチ等々、内容はさまざまだ。

本記事では、より広義のプロジェクトを円滑運営するためのPMOの課題と、それらを乗り越える対処法についてご紹介したい。

また、PMOについてそもそもの基本的な部分を知りたい方は以下の記事を先に参照していただきたい。

課題1:PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)導入時

PMOの最初の課題は、導入時の明確な目的設定と権限の明確化

まずはPMOのそもそもの役割を確認しよう。プロジェクト管理の教科書、PMBOKではPMOの役割は次のように定義されている。

”管理下にあるプロジェクトを一括、共同管理するための様々な責任を負う組織体。その責任は、プロジェクトマネジメントのサポート機能の提供から、実際のプロジェクト統括・管理まで多岐にわたる”

つまり、PMOの役割・機能は、プロジェクトの性質や組織体制に応じて柔軟に設定して良いのである。

PMOの目的・役割・権限設定がなぜ重要か

企業には、目的を持たない組織は不要だ。明確な目的がない、あるいは曖昧である組織に属するメンバーは、無駄な動きをすることになる。役割を履き違えて、かえってプロジェクトに支障をきたすPMOもあるだろう。

逆に、目的や役割が明確であっても、必要な権限が与えられていなければ、問題が生じた際に必要なアクションが取れない、といったことが起こり得る。

この問題への対処法は簡単だ。プロジェクト・オーナーであるクライアント、あるいはマネジメントが、PMO立ち上げ時にその目的と役割をしっかりと確認し、必要な権限を与えればよい。

重要性の高いプロジェクトのPMOであれば、社長直轄組織にして、PMOへの報告義務を課すための権限を与えても良いし、社内のステークホルダーに対して明確に重要性を伝えるといった前捌きを行っておくと、PMOが役割を果たしやすくなるだろう。

課題2:プロジェクトマネジャーとの信頼関係構築

PMOの業務はプロジェクト支援であって御用聞きではない

どのPMOにも共通する役割として、プロジェクトの進捗管理と報告業務がある。進捗を確認し、仮に重大な課題があれば詳細を確認の上、速やかにプロジェクト・オーナーに報告、必要な意思決定を取り付ける、といったファシリテーションが必要だ。

ここで肝となるのが、各プロジェクトリーダーから悪い情報がきちんと上がってくるようにするための、PMとの信頼関係である。PMOが現場の状況を把握しようとしても、的確な進捗状況が報告されず、正しい判断やアドバイスができないような事態に陥ることもままある。

悪い情報がきちんと上がってくる信頼関係とは?

実際のプロジェクトを推進するPMやチームには、PMOが彼らを支援する立場であることを行動で示し、理解してもらうことが重要だ。

報告業務を極力、手間のかからない形に工夫する、プロジェクト推進上の悩みを聞き、場合によっては一歩踏み込んで一緒に解決方法を考える、他部門との調整を支援する、課題について上層部にかけあう…、といったように「支援者であること」を行動で示すことが大切だ。

言うは易し、行うは難しだが、御用聞きやメッセンジャーではなく、ファシリテーターとして頼りになる存在であることが伝われば、悪い情報も上がってくる。

課題3:プロジェクト管理で陥りやすい過剰管理

プロジェクト・オーナーが細かい気質だと起こりがちな過剰管理

とくに大企業で起こりやすいのが、「進捗管理」と称してPMOが必要以上の詳細な報告を求める「過剰管理」だ。PMの時間と労力を著しく必要とするような詳細な報告を、頻繁に求めるPMOは少なくない。

過剰管理が原因でPMが本来のプロジェクトに集中出来ず、プロジェクトの遂行に支障をきたしたり、PMやプロジェクトメンバーのモチベーションを著しく下げてしまっては、本末転倒である。

実はこの問題は、PMOのマネジャーのみならず、プロジェクト・オーナーが原因となっていることが多い。プロジェクト・オーナーが細かい気質だと、PMOがそれを忖度(そんたく)して過剰管理に陥りやすい。

想像してみて欲しい。細かいオーナーにどんな質問をされても答えられるようにするために、PMOリーダーは本来「1」で良いはずの報告を行う際に「10」の情報を集めようと行動する。さらにその下の担当者は、「10」の情報に答えるために、「50」の情報を集めるように行動する。

こうした問題を防ぐには、プロジェクト・オーナー、マネジメントが過剰管理でなく、真に必要な情報が的確に上がってくる体制を敷き、PMO業務をチェックする必要がある。PMOの360度評価制度の導入、PMからの直接インプット機会を設けるといった対応も良いだろう。PMOが業務効率を著しく悪化させるような本末転倒な状態は、是非とも避けてほしい。

課題4:リスクマネジメントもPMOの重要な業務

どんなプロジェクトにも起こり得る不測の事態

どんなプロジェクトにも、予想し得なかった事態が起こり得る。それでも、過去の事例から、こういう時にトラブルが起こりやすいといった経験、知見があるはずだ。

PMOは、影響を及ぼしうるリスク要素に目を配り、プロジェクト・オーナーを含むステークホルダーにあらかじめ共有する、組織内でリスク審査にかける、リスク発生時の対応をあらかじめ決めておく、といった対応が必要だ。

どんなプロジェクトにも通じるリスク要素を、いくつかあげてみよう。

  • 規制・法改正リスク:関連法規制改正の動きが無いか
  • 人権・環境要素:人権侵害、環境破壊に関係していないか
  • 特定の国に起こりやすいリスク:支払遅延が発生しやすくないか、政治リスクは無いか
  • 課税リスク:想定以外の課税リスクは無いか
  • 顧客・ベンダー固有リスク:これまでの取引実績から納品遅延や支払遅延などが無いか

筆者が以前、関わったプロジェクトの中に、森林伐採につながると非難されるパームオイルとの関連が懸念として上がったことがあった。リスクをあらかじめ認識していたため、役員、経営者、親会社の役員に報告の上、結果、そのプロジェクトは断念となった。

昨今、騒がれている新疆綿の問題などもそうだが、企業責任が問われる範囲は従前よりも格段に広がっており、プロジェクトにおけるリスク管理の重要性はますます高まっている。

プロジェクトベース業務が増える中でPMO設置は必須に

PMO設置に及び腰にならないで

コロナ禍の影響もあり、業務目的、期間が明確なプロジェクトベースの業務が増えている。プロジェクトベースの業務が増えてくると、必然的に業務全般の標準化、効率化が課題となるため、PMOの必要性はますます高まると思われる。

しかし、PMOを導入したことがない企業であっても、恐るるなかれ。今はPMOを専門とするコンサルもあれば、PMOをサポートするツールも豊富にある。こうした外部リソースをうまく活用して、臆することなくPMOを導入し、社内での知見を積み上げてほしい。

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Ryoji Takada

Ryoji Takada

座右の銘は質実剛健。PDCAをやり遂げプロジェクト収益化まで愚直にやるのは得意分野。あだ名は夜桜で、昔は格闘技のプロであった時の名残。バイクとファッションと格闘技が好き。

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