社長・経営者が仕事で成すべき役割マッピング – 自分が有能でも意味がなくなる境目

年末最終日、思い返し年納めとしてブログを綴る。

企業は成長する中で社長の役割は全く変わっていくのを見た。企業Phaseが進むごとに介在していけない部分に口を出すことにより停滞が起こる。社長は前提として皆、有能な人が多いと思うが、その社長自身が足枷となりえる。

社長や経営者の役割ってなんなんだろうか。

だんだんその閾値が見えてきた気がしたのでマッピング、可視化してみた。最近「社長は立派でなければならない」というのは皆が作り出した幻想なのかもしれない。どういうことかという部分、自らの経験をシェアしようと思う。

社長の役割は事業Phaseごとで変わる

社長の役割は事業Phaseごとで変わる

きっかけ

正社員をやりながら、複数会社に入り業務委託でここ何年もやっていたことがきっかけ。ずっとパラレルワークで色々な業界、文化をみることができた。

それなりに安定して大きい会社に入ることもあれば、シリーズA・Bくらいから参画して、上場までお供したベンチャーもいくつか。私はマーケティングの部長代行でのハンズオン、もしくはその黒子の懐刀、みたいな立ち位置なので数年間横目で物事を観測することが多かった。

第三者のメタな目線で各会社間を見ると、対比で気づきがいろいろあるものなのだ。自分のしたたかな研究分野。だって面白いんだもの。

事業Phaseごとの社長の役割を見極める難しさ

社長の役割は事業の進行でここまで変わるのかというくらい違う。必ず自分でやらないといけない部分、任せなければいけない部分キッパリと分かれる。

初期は「執行者」でならなければいけなくて、その後どこかで「経営者」に変化しなければいけない。

必要な部分に介在しないのも事業が停滞するし、任せるべき部分に介在しすぎるのもまた事業を遅らせる。ここの塩梅がなかなか難しいのだ。

一人として同じ社長など存在しないし、それぞれのやり方でやるべきだと思う。しかしながら一定どのPhaseでどこに介在したらいいのかが見えてきた気がしたのでマッピングしてみた。

企業Phase × 業務範疇で見えてきた「社長介在 ◯×マトリクス」

ざっくり、以下のような感じだ。

  • 個人的所感、経験含まれている為、その辺はご容赦を
  • 事業特性や社長バックグラウンドなどでもだいぶ変わるイメージはあるのでその辺も加味していただきたい
  • オペレーションはカスタマーサクセスや、カスタマーサポートも含まれるイメージ
  • コメントFeedbackをもとに修正予定。色々な意見あると思うのでコメントください

縦軸はよくある役務、横軸は企業Phaseで切ってみた。なぜ上の表のようになるか綴りたいと思う。

各Phaseで社長が入るべき部分、入らないべき部分の理由

各Phaseで社長が入るべき部分、入らないべき部分の理由

◎〜×の意味合い

純粋に社長が入った方が明確に伸びる部分は◎にしてある。◯・△は事業により吉/凶分かれるイメージがあるので曖昧にしておいた。入ることで停滞した実例を見た部分は×にしてある。

1名〜数名

言わずもがな、1人の場合、全部自分でやらないといけないので割愛。もし有能な人がいたら移管してもいいけど基本的には事業の絵を描くこと、仕組み化一式は一緒にやることが好ましい。

〜10名程度( シードやプレシリーズA)

採用・ファイナンス・セールスは◎だ。なぜならば話は単純で自分が一番成果出しやすいから。お金は一番調達しやすいし、人材は一番口説きやすく、自分で考えた事業だから自分が一番理解していて売れる。

◎部分、任せすぎたり自分ができなかったりすると、事業が停滞しやすい。現場に早々に移管したいものの、事業計画のMRR・ARRにミートさせるためには実益をとらざるを得ないことが多い。

ない、すでにこの時点でCFO的人材とCOO的人材にはイケてる人材を確保できてたらラッキー。唯し減りゆくキャッシュ以上にパフォーマンスが見合えば、の話。ここを見分けられない場合、死の谷に落ちていく企業もある。

専門分野の知識が必要な部分は、口を出すと、だんだん認識乖離が起こってくる。事業計画目線が主眼となり、リソース・コストとの生合成が ? となる場合もある。

キャッシュの面で死の谷でもあり、一番の踏ん張りどころ。

〜30名(シリーズA〜Bくらい)

この部分では、一気に役割を変えなければいけない。停滞が顕著になってくる。

事業計画や採用は引き続き◎。事業計画はあたりまえなので割愛。採用は、大手幹部や著名人は社員のリファラーでなく社長直々じゃないと他社から引っこ抜けないイメージ。

30名にもなったらCFO的人材や数値監督を任せるCOO的人材は限界を迎えるので、マストで確保しておきたいイメージ。しかしながら曖昧にしてあるのは、この時点で社長がTOPダウン営業で年間数億円の受注を横目で見たりもしている経験があるから。必要な時には介在してキャッシュをもぎ取るのは必要なのかもしれない。

ここでの重要なポイントは「あるある停滞」が専門領域への理解の無さと、権限行使だ。マーケ・エンジニア領域は特に多いイメージ。

例えばマーケであると経営的には数値成果はすぐ欲しい。しかしすぐできる即席の施策は競合も実施しておりCPAが吊り上がりROIは取れず、中長期的施策に一定投資しなければ先がないが、目先の数値欲しさに先細りの方向に歩んでしまう、などはあるあるパターン。

エンジニア領域では風呂敷が広がりすぎるこや、社長意見オンリーで顧客意見吸い上げがないことでMVP弱かったり問題などがあるあるパターン。結果コストを投下、実装してるのに引きが弱い。

〜それ以後

だんだん重要なところを手放し任せていくイメージ。ただしファイナンス、採用領域を曖昧にしてある。

ファイナンスは資本政策を間違ってしまうのを見たことがある。株主全体の合意形成方式にしてしまい、何も進まないなど。

採用(というか人事領域)なのだが、この辺りになると役職と権限があるがパフォーマンスが一致しない人が一定でてくる。しかし「昔から仲が良かった」などの事情でその器に留めておくとロクなことがない。ついて来れない場合、ドライに切れないといけない。

このような際は、最高権限者である社長自身が切り出さないと誰もモノを言えない。人はどうやっても権限には逆らえない為。

まとめると

一言でいえば0→1にいかに近い抽象的領域か、付加価値が高いかが「表の上部領域」なのだと思う。右脳領域とでもいうのだろうか。

そして抽象ができてても「表の下の部分」要件定義/Operationをしっかりしないと結局実現までこぎつけられない。実現の為にはマーケ・エンジニア・カスタマーサクセスなどの明確なアクションを通してアウトプットとなる。

現場を止めてしまう経営者の共通項

現場を止めてしまう経営者の共通項

ここで上の×をそれぞれ思い返すと、当てはまる共通項があった。

  1. プライドが高い・異なる価値観を許容できない
  2. 100%でないと許せない
  3. 承認より批判の方がついつい多い

経営者が自信を持っている「常識」の中に盲点があることもある。過去の成功倫理だったりするのだ。そのなか自分の思う正解に縋り付き、停滞を起こすことも多かった。

そして、自分ができる人ほど失敗や先進的価値を許容できず事業を遅らせる。実は、計画が完璧でなくても60割%程度の骨子さえ確定できれば、リリースしても対して成果が変わらないことも多い。

また熱意は大事なのであるが権限を一番もってることを失念しているのも共通しているかもしれない。自分の発言には思った以上のパワーがある。指示するのは簡単だが、人を許容してあげないといつかパフォーマンスは落ち、潰れる。

これが「器」を言語化したモノなのかもしれない。人数が増えた際にそれが試される。

社長が行動を間違えると、結果どうなる?

社長が行動を間違えると、結果どうなる?

そして、上の結果、だいたいこうなるよ、っていう経験則がこちら。

  1. 論理的思考ができる人やイケてる人は消える
    • 発言したところで「理解されない」ことを理解している
    • ≒残るのは社畜とゴマスリとなる
  2. 誰も意見を言わない、言えない
    • 雰囲気を推し量る人が多くなるので発言しづらくなる
    • 論理が合っってても糾弾されるのでまず本音言わない
    • 思考してないので、言おうとしても言えない
  3. 会議だけで、何も決まらない

結果、無駄な時間が流れ続け、パーキンソンの法則そのままの組織となる。こうなると体質の問題なのでどこかで大きな痛みを以て変革が入るイメージ。

和を以て是をなす企業となり、停滞しやすい。こうなると皆体裁を繕い本音を奥に隠すから、経営者からすると目の前にある事象が水面下に隠れて、見れなくなる。8割の人は自分の評価が気になる為だ。

結局分解すると、いけてる人が退職する風に経営側が影響を及ぼしてるのだ。社員は口が避けても言えないが。

そういうものをすっ飛ばし率直な意見をいう人間は評価する組織体にベターだとは個人的には思う。大体こういう人、有能なのですぐ退職し独立する。いかにそういう人を抱えれるかがグロースの鍵かなと思う。

実は社長に向いていない「秀才」と、実は向いてた「サイコパス」

過去の経験で、面白い対比があった。

「秀才」すぎる故に入りすぎてしまう社長

とあるところに秀才の社長がいた。戦略コンサル上がりの社長だ。

自身の過去の経験からなのか、営業の数値や資料のこまかいトンマナが許せないようだ。またコストをかけた施策実施の際に、目的と成果の逆算、数値の細かい粒度に介入し過ぎてしまう。なかなかGOを出さない。

施策一個一個の質は比較的高いが、一個一個のGOが遅く、時間だけがすぎた。結果、微々たる成果となってなかなか事業数値は伸びなかった。

実はその掛けた時間はあまり意味をなさなかったのである。

「サイコパス」であるが人を生かす社長

また、とあるところにシリアルアントレプナーの、とてもエキセントリックな人がいた。

お酒も好きで、酔っ払うと悪い噂しかない。すぐ手は出るし、よく会社内で激怒する。そこのCOO曰く「精神に病がある人と思って接してね」と言われるほど。

しかし手腕はすごかった。プレゼンテーションの腕は一流で、株主集めがうまかった。営業での案件のもぎとり方、競合の駆逐の仕方は方法論を選ばずえげつなかった。

そんな一面がありつつも、現場に接している部の意見を最優先としUX設計の指示をしたり、エンジニアファーストにしたり、課題をあげる人の意見を潰さず評価対象にし、部署の壁を作る人は居づらい組織文化とし、風通しの良さを徹底して築き上げた。

過去の経験で色々失敗したことが骨の髄にしみこんでるらしい。綿密な区分けをしていた。結果、業界の後発ながらも、破竹の快進撃を続け上場した。

・・・

前者の秀才は堅実なイメージがあるが、下手すると小さくまとまってしまう。後者は変人でサイコパスはその分色々な問題が起こっていたがずば抜けた成果を残す。

天才と変人は紙一重というが、むしろイコールなのかもしれない。

あるがままの弱みを見せ、任せれるか?

企業が大きくなればなるほど、経営者ないしはそこに近しい権限者が制約になっていることに気づいていないパターンは多いと感じる。常日頃プライドを誇示するほど、制約も多く発生する。明確なトップダウンが必要な時にだけ、使えばいい。

社長は辛い。目標が大きいほど、どうしようもないことも、人の失敗も自分の責務として捉え、笑顔で進んでいなければならない。時には裏切られ資金難なども乗り越えねばならず、不安でいっぱい。内側はボロボロな人も多いだろう。

いずれ張子の虎は限界を迎える。社長だってもっと社員や周りを頼っていいし、頼らなければ先はない。社長は「立派でないとならない」なんて、幻想だ。

なお、このブログは自らに向けた戒めでもある。今年は、自分でやるべき領域の怠慢をしていた。また頼るべきところを頼らなかった。

来年は経営者としても進化していきたいと同時に、マーケッターとしてはさらに社長に寄り添えるようになりたい。

それではみなさま、良いお年を。

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Ryoji Takada

Ryoji Takada

座右の銘は質実剛健。PDCAをやり遂げプロジェクト収益化まで愚直にやるのは得意分野。あだ名は夜桜で、昔は格闘技のプロであった時の名残。バイクとファッションと格闘技が好き。

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